王にも勝てぬものがある







 夜の闇も深まる、そんな時間。夢の世界に旅立とうとしていた我を引き戻さんとばかりにドアを叩く控えめな音が耳に届く。
 折角寝かかっていた所を邪魔され、心の中で舌打ちをし、中に入る様に促す。早く寝たいしな。



「鍵は閉まっておらぬ、我に用があるのならさっさと入って来たらどうだ」

「……えっと。その、遅くにごめんね。起こしちゃったかな?」

「ユ、ユーリ!? どうしたのだ、こんな時間に! 何かあったのか!?」

「あの、その、えっと。眠れなくて、その……」

「ん? 布団に転がっていたら眠れるのではないのか?」

「そ、それはそうなんだけど……一人じゃ、その、怖くて……。
 ディアーチェ、い、一緒に寝ても良い?」



 我の言葉にドアを開け部屋に入ってきたのはユーリだった。ハの字に下げた眉、不安げに揺れる瞳。

 そんな様子のユーリに何かあったのかと思ったが、どうやら杞憂のようだ。
 訳を聞く我に対して、言い辛そうに眠れないというユーリ。うむ、布団に転がっていれば眠れるものだと思っていたのだが。例外もいるのであろうか?

 そんな事を思っていたら、自分の枕を胸元に抱えたユーリが恥ずかしそうに顔の半分を枕で隠し。話すのだが、最後の方がしりすぼみになっていって聞き取れない。

 うむ、何て言ったのか聞こえない以上、我はどう返答すれば良いのだろうか? 聞き返すのは、何故か不味い気がするのだが。
 暫く考えていたのだが、名案が浮かばぬから仕方がない、素直に聞き返すとするか。



「ユーリ。すまぬがもう一度言うてくれぬか? よく聞き取れなかったので、もう少し近づいてくれればありがたいのだが」

「うぅ、ディアーチェのバカ」

「うっ! す、すまぬ。今度からは気を付ける」



 我が聞き返すと半分だけ見えていた顔を枕で完全に隠して怒るユーリ。どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。
 我に非がある手前素直に謝ったが、果たして許してもらえるのだろうか?



「……ディアーチェ、一緒に寝てくれる?」

「ぬっ!?」



 枕を胸元に戻したユーリは、我の近くに来てしゃがみ込み。上目遣いで予想外の事を言ってくる。
 あまりに予想外過ぎる言葉に奇声を発する我。夢でも見ているのであろうか? 半ば現実逃避仕掛けていた我の顔を覗き込むユーリ。

 ん? って、近い!? 近いぞユーリ!? 突然の事態に顔に熱が集まってくるが、それどころではない!!



「ディアーチェ、どうかしたの? 大丈夫?」

「う、うむ心配いらぬ! 何でもない!」

「そう。えっと、それでダメかな?」

「い、いや。そんな事はないのだが……」

「私じゃ嫌かな?」

「いや、そういう事でもなくてだな……」

「えっと、じゃあ良いの?」

「えっと、まぁ、ユーリがどうしてもと言うのであれば我はかまわぬが……」



 我を心配するユーリだが、正直これ以上近付かれると我の心臓が持たぬ。何とか平静を装い誤魔化すのだが。
 息付く暇もなく件に戻る。どうやら無かった事には出来ないようだ。我としてはこのまま有耶無耶になったくれれば平穏に眠れたのだが。

 とはいえ、不安そうに問うユーリに断るという選択肢が我にある筈なく。無条件降伏してしまうのだが、まぁ仕方あるまい。
 ユーリを悲しませるなど我には出来ぬ。



「ホントに?」

「う、うむ」

「ありがとう、ディアーチェ大好き♪」

「ぬぁ!?」

「ディアーチェ??」

「な、何でもない!! 気にするな」



 かまわぬという我の言葉に嬉しそうに表情がぱぁっと華やぐユーリ。
 横にずれると、半分空いたベッドに潜り込むユーリだが。我に抱きつき嬉しそうに感謝の言葉を述べる。
 まぁ、抱きつかれた事には正直驚いたのだが。最後に大好きと言われなければ、なんとか奇声を出すのは防げたのだがな。
 疑問符を浮かべるユーリを強引に誤魔化し眠る様に促した。





終われw





 数分後、穏やかな寝息をたて。我に抱きついたまま幸せそうに眠るユーリに対して。眠気が吹き飛んだ上に、こんな状態に早鐘を打つ心臓と落ち着かない心。
 故に、起こさない程度の音量で本心が口から漏れるのだが。これから我はどうしたら良いのだ?



「……ね、眠れぬ」



 抱きつかれた状態から脱出出来たのなら、どうにか眠れるかも知れぬが。結構がっちりホールドされておるし、もし起こしたりしたらその方が困る事になるのでどうする事も出来ぬ。
 いちるの望みをかけシュテルに念話を飛ばしてみた。



『シュテル、起きておるか?』

『……どうかしましたか王』

『うむ、少し知恵を借りたいのだが……』

『知恵ですか?』

『そうだ。ユーリが我に抱きついたまま眠ってしまったのだが。どうやったら起こさずに、抜け出せるだろうか?』

『別にそのまま眠ったら良いのでは?』

『いや、それが眠気が全く降りてこぬのだ』

『……ふむ。それはご馳走様です。私はそれそろ眠りますのでお幸せに王♪』

『ちょっ!? おいシュテル!? 一体なんの事だ? 訳が分からぬではないか……』



 自己完結したシュテルに一方的に念話を遮断され。項垂れるディアーチェが眠れたのは朝日が昇ってからだったとか。





 終わり


 
なのはGOD未プレイなんだけど、書きたくて我慢出来なかった(笑
ディアーチェの喋り方がツボ過ぎる(ぇ
もういっそ家来にでもして欲しいな←ぉ

そして未プレイが故にユーリの喋り方の把握が出来てないww
同人で、すこーし見た程度の知識ですww
ディアーチェのは一応前作を途中までプレイしたのと同人で見た程度の知識。

まぁ、変だったら皆さん脳内変換よろしくです!


【2012年4月30日】 著 



SS保管庫 リリカルなのは

トップ アイコンネズミ堂〜時々ねこ屋〜 トップページ
直線上に配置

inserted by FC2 system