責任の取り方







 はやてと一緒の任務の帰り、私もはやても今日は家族みんな仕事で家に居なくて。
 それなら家に泊まりに来ない? って誘ったんだ。

 私の家だし、誘ったのは私だから夕飯は私が作るって言ったのに、自分が作るから座っといてと言われる始末。
 そりゃあ、はやてには適わないけど簡単な物くらい私にだって作れるんだよ?

 手伝わせても貰えなくて少し不貞腐れていたフェイトだったが。嬉しそうに料理を始めるはやてを見て、まぁ良いかと思ってしまう。



「フェイトちゃん、夕飯何食べたい?」

「ん〜何でも良いよ、はやての料理何でも美味しいから」

「そ、そう言われるんは、まぁ嬉しいんやけど。出来れば何が良いか言ってくれた方がメニューが決まってありがたいんやけど」

「ご、ごめん。えっと、じゃ、じゃあハンバーグが良いな!」

「ハンバーグ好きなん?」

「普通に好きだけど?」

「いや、何でもええんよ? 一番好きな物、言ってくれたら作るから」

「ヴィータにね、聞いたんだ。はやてのハンバーグが凄く美味しいって、だから一度食べてみたかったんだ!」

「うっ……そないハードル上げられたら、頑張らんとあかんやん」

「いつも通り作ってくれて良いんだけど? 私は、いつものはやてのハンバーグが食べたいんだから」

「……よ、よく恥ずかしげもなく、そんな台詞言えるわ。なんや恥ずかしなるから、なのはちゃんだけにしといてや」

「え? 何で、なのは??」



 ヴィータが良くはやての作るハンバーグはギガうまだって言ってるから私も食べてみたいと言うと、そう期待されると頑張らんとあかんやんと言うはやて。
 はやては料理上手なんだし、気負わなくても全然大丈夫だと思う。私としてはいつも通りに作って欲しくて、そう伝えると複雑そうな顔でそういう事はなのはにだけ言って欲しいと言われる。

 何でなのはなのかを聞くとはやてから信じられない事を言われ、即答で否定する事になるんだけど。
 まさかそんな風に思われてるとは……。



「せやって、二人は付き合ってるんやろ?」

「付き合ってないよ!」

「えぇ!? あれ? だってラブラブやん!」

「あれは友達同士のスキンシップだよ! 私は、なのはの事をそんな風には見てないよ!」

「そ、そうなんや。わたしはてっきり二人は付き合ってるんやと思てたわ。って、あのフェイトちゃん? 何か機嫌悪くなってへん?」



 はやてのラブラブやんって言葉に少しショックを受けて思い返す。うん、やっぱりなのはとは友達同士のスキンシップだよ、キスだってしてないし。
 そんな事を考えていたら私が不機嫌なんだと思ったはやてが気まずそうに聞いてくる。



「……いや、まさかはやてにそんな風に思われてたなんて思わなかったから」

「か、堪忍なぁ〜、二人が余りに仲良いから早とちりしてもうたんよ」

「思い込まないで、聞いてほしかったよ……」

「こ、今度からは気を付けます」

「そうしてもらえれば助かるよ、だって好きな人に誤解されるのは嫌だからね?」

「ん? えっと、聞き間違いやろか? なんか、好きな人とか聞こえた気ぃしたんやけど……」



 あはは、嫌やなぁ〜疲れてるんやろか? と、笑いながら頭を掻くはやて。
 まぁ、女の子同士だし、一回言ったくらいで気持ちが伝わるとは思ってないけどね? でもね? はやて、私本気だよ!!



「聞き間違いなんかじゃないよ! 私が好きなのは、はやてだから。念の為に言っておくけど、勿論友達としての好きって意味じゃないからね?」

「っ!? う、嘘やろ!? はっ! 何のどっきりや? 管理局どっきり企画??」



 私の告白に狼狽えるはやて、動きが挙動不審になってるよ? 可愛いなぁ〜♪
 はやての狼狽えっぷりに笑いを堪る。笑ってるってばれたら多分怒られると思うし。



「地球じゃないんだから、どっきりは無いと思うよ? それに、たとえどっきりがあったとしても、私はそんな嘘はつかないよ! はやてを好きな気持ちは嘘なんかじゃないから!」

「た、確かにフェイトちゃんはそんな嘘は言わへんけど……。ホ、ホントに?」

「うん。 私は、はやてが大好きだよ♪」

「せ、せやって今までそんな素振り全然なかったやん?」

「まぁ、自覚したのは最近だしね。でも、はやてを好きな気持ちは誰にも負けてるつもりはないよ!」

「うぅ。ま、まさかフェイトちゃんに告白される日が来るとは思わんかった。人生何がおきるか分からんなぁ〜」



 再三の告白にようやく信じてくれたはやてが、しみじみと告白されるとは思わなかったと漏らす。
 まぁ、私だって今日告白する積もりは無かったんだけどね。でも流石に誤解されたままじゃ困る訳だし、色々と何か我慢できなくて。
 はやて可愛いし、自分から誘っといてあれだけど、今日耐えられるんだろうか?



「えっと、はやてはさ。好きな人っているのかな?」

「え? いや、そういうん考えた事ないからよう分からんかな〜」

「私の事どう思う?」

「ど、どうって言われても。優しくて心配性でモテモテとか?」

「そうじゃなくて、好きか嫌いかって事だよ」

「えぇ!? いや、でも、そんなん考えた事ないし」

「じゃあ考えてみてよ!」

「あ、いや、いきなりそんなん言われても……」

「それとも女の子同士だからだめかな?」

「いや、そこはあんまり気にせえへんけど? 愛に性別は関係ないと思うんよ?」



 私の事はどう思うのか考えて欲しいと伝えると、歯切れが悪いはやて。
 やっぱり女の子同士だし嫌なのかと思ったら、そこは気にしてないと言われた。じゃあ何がそんなに気に掛かってるんだろう?



「ねぇはやて、もし私の事を気遣って答えにくいんだったら気にしないで言って欲しい!」

「あーうん。それもまぁあるんやけど、それだけやなくて……」

「うん? 他に何かあるの?」

「正直に言うとやね、自分でもフェイトちゃんの事どう思っとるんか分からんねん」

「分からない?」

「あーちゃうよ! 誤解せんといてよ! 友達としては勿論好きやで!」

「う、うん。ありがとう?」



 私の事をどう思ってるのか分からないと言うはやてに疑問符を浮かべて聞き返すと、大袈裟に手を振られ友達としては好きだと言われる。
 好きだと言われ嬉しい筈なのに、友達としてはと言う言葉にチクリと胸が痛み、ありがとうと言い返す事しか出来ない。



「ただな、フェイトちゃんが聞いてるんはそいうい意味とちゃうんやろ?」

「うん。恋愛的な意味で聞いてるから」

「やから分からんねん、だから返事なんて出来る訳ないんよ」

「そっか、そうだね。急過ぎたね、ごめんねはやて」



 私の事を真剣に考えてくれてるはやて。
それにひきかえ私ははやての気持ちを考えてただろうか? はやてを困らせて、これじゃあ気持ちを押し付けてるだけじゃないか。

 考えなしの自分が腹立たしい、戻れるなら告白する前に戻りたい。
 自己嫌悪になり俯く私を心配して声を掛けるはやて。



「あのさぁフェイトちゃん、もしかして落ち込んでたりせえへん?」

「そんな事ないよ」

「嘘はあかんよ、嘘は! ちゃんと顔に書いとるんやから、はやてさんにはお見通しやで〜」

「そんな事言っても騙されないよ」

「ん〜、ほんならわたしの目ぇ見て言うてみてや」

「〜〜っ!? な、んで目を見て言わないといけないの!」

「何も後ろめたい事無いんなら問題ない筈やで!」

「そん――」



 そんな事無いと言おうとして勢い良く顔を上げると何かに口が塞がれて言葉を遮られた。
 一体何だろう? 柔らかいし暖かいし良い匂いがする。疑問符を浮かべ首を傾げると私の口を塞いでいるものから、呻き声が漏れぼんやりしていた意識覚醒する。

 そう、私の口を塞いでいるのははやてのそれ。つまりはやてとキスしている状況なのだ。慌てて離れると私の目の前には耳まで真っ赤に染まったはやてが呆然と立ち尽くしている。
 態とじゃないとはいえ、謝って許される事では無い。だけど謝る事しか出来ない私は慌てて謝る事しか出来ない。



「ご、ごめんはやて! ホントにごめん!」



 謝るフェイトにただ口をぱくぱくさせるはやて。突然の出来事に心此処にあらずのはやてにはフェイトの言葉も右から左に行くのみである。
 そんなはやての心情は露知らず、焦るフェイトはとんでもない事を口走る。



「ごめんはやて、私責任取るよ!」

「ふぇ、ふぇいとちゃん?! な、なん!? 責任!?」



 責任の二文字に意識が覚醒するはやて。聞き間違いだと思い慌てて聞き返すと、王子様スマイルで責任を取ると肯定するフェイト。



「うん、態とじゃないとはいえ、キスしちゃった責任は取らないと!」

「いや、待って! フェイトちゃんに近付き過ぎたわたしも悪いんやし、責任って程のもんやないよ?」

「でも、それじゃあ私の気が済まないよ!」

「そ、そんな事言うたかて第一どうやって責任取る積もりなんよ?」

「こういう場合はやっぱり結婚じゃないかな?」

「ちょっ、ちょぉ!? なんでそない大事になるんよ!?」

「え? だって母さんが言ってたし、リニスも言ってたし私はそう思ってたんだけど?」

「リ、リンディさん極端過ぎるわ〜、考えが古……げふんげふん。やなくて堅すぎるわ」

「はやて? 私どこかおかしいかな?」

「あーうん、まぁ、リンディさんとリニスさんが言うた事は話半分やと思った方がええって事ぐらいかな〜」

「え? 嘘なの?」

「いや、嘘って事やなくて説明が足りてへんって事やね。そういう事やからわたしの事は責任とか取らんでも大丈夫やから」

「ん〜よく分かんないよ。それじゃあどうすれば良いのかな?」

「やから気にせんでええって言うてるのに〜」

「でも……」



 やっぱり悪いよ〜と、引き下がらない私に対して声を出して笑うはやて。流石に笑うのは酷くないかな?
 拗ねる私にいつもの軽いノリで「ほんならわたしの恋人になるかぁ〜」と言うはやて。

 にやにや笑ってる表情から私の事をからかってるのは一目瞭然なんだけど、気付かない振りをする。
 だってこれって凄いチャンスだし、上手く行けばホントに恋人になれるよね?



「うん、私はやての恋人になるよ!」

「うぉ!? ちょっ、ちょぉ待ってふぇいとちゃ――」

「何はやて? 私はやてに好きになって貰える様に頑張るね!」



 慌てるはやての言葉を遮り、王子様スマイルで答えるフェイト。
 免疫があるとはいえ、その笑顔に毒気を抜かれ、まぁ良いかと溜め息を漏らすはやて。
 身から出た錆とはいえ、人間諦めも肝心である。



「あー、まぁ、程々にな?」

「うん! じゃあ早速みんなに報告を――」

「ちょい待ちフェイトちゃん! みんなにナニを報告するんや?」

「何って、はやてと恋人になった事だけど?」

「いやいやいや、何当たり前の事聞いてるの? って顔で言われても困るんやけど。というか報告は待って下さい」

「何で?」

「いや、何でて。そんなん恥ずかしいやん! やから秘密にして貰えるとわたしは嬉しいんやけど」

「そうなの? でもアリサとすずかは私がはやてを好きだって事知ってるから言わなくてもバレると思うよ?」

「うぁ〜〜!? さ、最悪や。絶対いじられる、いじるのはわたしの専売特許やのに!」

「アリサが何をしたとしても、私がはやてを守るよ!」



 いじる云々、気にし所がズレてるはやてに、私が守るよと言い切るフェイト。
 羞恥に頬を染め、王子様スマイルが付加されるんはどうにかならんのやろかと思考があさっての方に向いてしまうはやて。



「あー、うん。ありがとう?」

「何で疑問系なの!?」

「いや、ソンナコトナイヨ?」

「片言!?」

「ナニイウトルン、フェイトチャン?」

「はやて!? 何かおかしいよ!?」



 その日は、終始おろおろするフェイトと気恥ずかしいのを誤魔化すはやての会話が成り立たなかったとかそうじゃないとか。

 そして、翌日からライフワークと言う名の胸揉みが出来なくなったはやてが心労で倒れるのは、また別のお話。





 終わり



恥ずかしさで壊れるはやてさんww
途中から変な方向に行ったけど気にしナイw←気にしちゃいけナイ。
二次創作なんてそんなもんだよ…ね?

【2011年4月20日 23日 24日 27日  2012年1月9日 11日】 著



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