キスしてあげない








「はやてちゃん、わたしどうしたら良いのかなぁ」



 いきなり部隊長室にやって来たなのはちゃんは、今にも泣きだしそうな顔で詰め寄ってくる。
 いくらわたしがちび狸やって言われてても。訳も聞かずに助言なんて出来る訳ないやん。
 大方フェイトちゃん絡みなんやろうけど。わたし結構忙しいんよ? 惚気も程々にしてほしいんやけど。



「あー、取り敢えず離れてくれへんか?」

「ふぇ?」

「せやから近すぎるねん! ちゅーして欲しいんか?」

「〜〜っ!?」



 握り拳一個分くらいしかない、なのはちゃんとの距離。どちらかがバランスを崩したらキスしてまいそうなくらい近い。うん、流石に近過ぎるやろ?

 離れて欲しいと告げても、間の抜けた声を出し、きょとんとするだけ。相変わらず鈍いなのはちゃんを少しからかうと、声にならない叫びを上げ瞬時に後退りされた。
 いやいやいや、流石に下がり過ぎやろ? わたしを何やと思とるんよ、冗談に決まっとるやん。



「そない下がられても傷つくんやけど。冗談も通じへんの? ちゅーなんてせえへんから、もうちょぉこっち来てくれへん?」

「あ、ぅ。ごめんはやてちゃん、そんなつもりはなかったんだけど」

「取り敢えず最初に言うとくで。惚気なら聞かへん! 仕事の事なら聞く、相談ならわたしの仕事が終わってからにして欲しい。OK?」

「ひ、ひどいよはやてちゃん!? 惚気なんて言わないよ!」

「やれフェイトちゃんの寝顔が可愛いだの、寝起きが可愛いだの、恥ずかしがってるのが可愛いだの言ってるのは何処のどなたやったかなぁ〜?」

「はぅ!? ち、違うもん! ホントの事なんだから惚気じゃないもん!!」

「うっさい!! 正真正銘の惚気や! これが惚気やなかったら、何が惚気になるんよ? で、何をしに来たんや?」

「ちょっ、わたしの抗議スルー!?」

「そんなんええから、早く話してくれるか。お惚気教導官殿?」

「うぅ〜〜。ひどいよ〜」

「あんな、なのはちゃん。わたしホンマに忙しいんよ、ちゃっちゃと話さんねやったら帰ってくれへんか? 後でええんなら惚気でも何でも聞いたるから」

「……わかった。直ぐ話すから今聞いてほしいの」

「OK、ほなちゃっちゃと解決しよか!」

「うん」



 いつもより覇気が弱い返事を返すなのはちゃん。
 これは思ったより深刻な事なんか? と、身構えたわたしは数分後、窓から見える景色を虚ろな目で見つめていた。
 なのはちゃんの相談ごとはわたしの予想の斜め上どころか、下に向かっていて。緩和剤にアリサちゃんとすずかちゃんを部隊に入れたいと一瞬本気で思ってしまった。

 掻い摘まんで言うと、付き合って7年目なのに、未だにキスもさせてもらえない事になのはちゃんが我慢の限界に達して。昨夜キスしてしまった。
 その日はそのまま同じベットで寝たんだけど、朝起きると既にフェイトちゃんが居なくて。目が合って話掛けようとする度に瞬時に逃げるフェイトちゃんにどうすれば良いのか分からないとの事。
 呆れてまうのはしゃあないやんなぁ? てか、あれだけいちゃベタしとるのに。まだキスすらしてなかったんか。



「あー、なのはちゃん。こういう事は仕事中に聞きにこんといてくれへんか? というかちゃっちゃとフェイトちゃんに謝ってこい!!」

「それが出来たら相談にこないよぉ〜」

「避けられてるんやったら、気付かれんように近付けばええやろ?」

「それはもう確認済みなの。第一魔力でばれちゃうんだもん」

「はぁ、しゃあないなぁ。ほんなら奥の手や! マリエルさんが作ったこの魔力遮断マントを着て食堂に隠れといてくれるか?」

「ふぇ? 隠れてどうするの?」

「わたしがフェイトちゃんを食堂に連れてくから、タイミング合わせて出てきて誠心誠意謝ったらええ!」

「で、でも逃げられると思うんだけど」

「そこはエリキャロに協力してもらうから問題あらへん♪」

「エリオとキャロに?」

「あのフェイトちゃんが、二人に両腕に抱き付かれた状態を振り切って逃げれると思う?」

「……思わない。バイントより強力なの」

「やろ? せやから、ちゃんと謝って許してもらうんやで!」

「う、うん頑張るよ!」



 ニヤリと笑う部隊長とファイティングポーズをとる教導官。
 数十分後、食堂が大騒動になったのは言うまでもない。





終われww




なのフェイ、なのにフェイトちゃんが出てないのはこれ如何に(ぇ
ホントは食堂の件も書くつもりだったけど力尽きただけ(ォィ

作成時間リアルに1時間40分=睡眠時間プライスレス(苦笑

【2012年3月29日】 著



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