君を護る為なら








 私はフェイト・テスタロッサ、金髪で赤眼。
 代々警視総監の職に付くエリートを排出している一家、テスタロッサの家の次女で高校生だ。
 警視総監の母さん、警視の姉さん、私も将来は警察官になるつもりだった。
 あの日、母さんから告げられた私の出生に関わる事実を聞かされる前はーー





「フェイト〜、ママが呼んでるよ〜」


「アリシア、抱きつかれてたら母さんの所に行けないんだけど」


「え〜、フェイト力持ちだから大丈夫だよ〜♪」





 私の部屋にやってきたアリシアは、言伝を伝えながら私の背後から抱きついてくる。
 昔からアリシアは甘え上手で、私も別に嫌な訳じゃないんだけど。
 流石にこの年になると妙に気恥ずかしい。
 だけどそんな私の心境はお構いなしで、更に力を込めて抱きついてくるアリシア。


 決して大きいと言える部類には入らない、だけどちゃん自己主張している小さな膨らみが、私の背中に当たっている。
 態と? 態となの? アリシア。





「いや、その、そういう問題でもないんだけど……」


「偶にしかないお休みなんだから、構ってくれなきゃ嫌だよ」


「職場でも、こんな事してるの?」


「むぅ、フェイトはお姉ちゃんをなんだと思ってるの? 公私混同なんてしてないよ! 仕事はきっちりしてます。
 じゃないと警視になんてなれないんだからね!」


「ご、ごめん。そうだよね、警視なんだよねアリシアは。凄いね」


「えっへん! 分かればよろしい!」


「……何をしているんですか、あなた達は」





 背中に感じる柔らかい感触の気を紛らわす様に、たわいもない話をしていると。
 アリシアによって開けっ放しになっていた私の部屋の扉から、リニスが呆れた顔で見ている。
 リニスは代々テスタロッサの家に仕える家系で母さんが子供の時から、この家でメイドをしてくれている。





「見て分からない? フェイトに抱きついてるの〜」


「そんな事は見れば分かります! そういう事では無く。
 私が言っているのは、プレシアにフェイトを呼んで来る様に言われたアリシアが何故フェイトの邪魔をしているのかって事です!」


「邪魔なんてしてないもん! ただ抱きついてるだけだもん!」


「それを邪魔してるって言うんですよ!」


「邪魔じゃないもん! リニスのばか!」


「はぁ、もう良いです。フェイトそのままプレシアの所に来て下さい」


「えっと、ごめんねリニス」


「フェイトは悪くないですよ、全てはへっぽこ警視総監が悪いんです!」


「あはは、それじゃあ母さんが可哀想だよ」





 リニスの説教もアリシアには効果が無く、梃A(てこ)でも離そうとしない。
 無駄だと悟ったリニスは溜め息を漏らし、アリシアに抱きつかれたまま母さんの所に行く様に言う。
 なんだか申し訳なくって謝ると、おちゃらけた様にへっぽこ警視総監が悪いと返された。


 いくら、幼い頃から仲良しだからって、メイドのリニスからへっぽこと言われる母さんって……。





「やっと来たわね、フェイト。母さん待ちくたびれちゃったわ」


「ごめんなさい、母さん」


「謝らなくて良いですよフェイト。悪いのは、あのへっぽこなんですから!」


「ちょっ、ちょっとリニスへっぽこは無いでしょ!」


「誰もプレシアだなんて言ってませんよ?」


「私を見ながら言ったじゃない!」


「えぇ、見ましたよ。だってプレシアの事ですから」


「やっぱり私の事を言ってるんじゃないの!」


「そうですよ〜、仕事はちゃんとしてますが、プライベートはへっぽこ100%の警視総監殿♪」


「だから私は、へっぽこじゃないって!」


「いいえ、へっぽこです! 再三背中叩かれないと、フェイトに大事な事すら伝えられない、好きな人に告白も出来ない、へっぽこです!」


「流石に立て続けに言われると凹むんだけど、というか最後のは関係無いでしょ!」


「そうですね、前言を撤回します。追いつめられなければ、大事な事を伝えられないへたれですね?」


「悪くなってるんだけどリニス……」


「まぁ、プレシアで遊ぶのもこの辺にしときましょうか。
 では、さっさとフェイトに話してあげて下さい」


「うぅ、リニスが苛める……」


「苛めてません。人聞きの悪い! 楽しんでるだけです♪」


「余計酷いわよ!」


「はいはい、それより早く言ってあげないとフェイトが可哀想ですよ?」





 母さんとリニスの遣り取りを見て、幼馴染みのはやてが言っていた言葉が頭に過ぎった。
 フェイトちゃん所のお母さんとリニスさんの会話は漫才やなぁ〜という、何とも反論し辛い事を。
 確かに母さんとリニス漫才みたいなんだよね〜と場違いな事を考えていた私に言い辛そうに話し出す母さん。




「あのねフェイト、あなたとアリシアが異父だって事は昔話たわよね?」


「うん、聞いたよ」


「えっとね、アリシアの父親は昔に亡くなったのだけど、フェイトの父親は本当は生きてるのよ」


「え? 私の父さんって死んだんじゃなかったの?」


「えぇ、その色々と言い辛い事情があってね」


「そうだったんだ……」


「でね、その信じられないかもしれないけど。
 フェイトのお父さんね、マフィアのボスなのよ」


「え? まふぃあ?」


「そうマフィアよ、日本で言うと極道になるのかしら?」


「えっと、母さん。冗談だよね?」


「信じられないでしょうけど本当よ」


「え。だっ、だって母さん警視総監だよ? マフィアって捕まる側の人達だよね? 犯罪者なんだよ」


「えぇ、だから言い辛い事情があるって言ったじゃない」


「じゃ、じゃあ母さんは父さんを捕まえるの?」


「それが色々複雑でね、日本では犯罪を犯した訳じゃないし。
 こっちが勝手に手を出すと国際問題に発展しちゃうのよ」


「えっと、母さん。じゃあ日本なら父さんは捕まらないって事?」


「えぇ。全世界のマフィアの頂点に君臨する、千を超える同盟ファミリーを傘下に従えるファミリーのボスに手を出す命知らずが居ない限りはね?」


「えぇぇぇ!? と、父さんって、そ、そんなに凄いの!?」


「とてもそんな風に見えないんだけど、凄いのよ」





 笑顔でさらりと酷い事を言う母さん。
 嘘と思いたいんだけど、嘘じゃないんだよね? 





「それでね、マフィアのボスを受け継げる人間がフェイト。貴女しかいないの」


「えっ!? わ、私が継がないといけないの!?」


「それがね、少しややこしくて、お父さんは継がすつもりは無いらしいんだけど。先走った同盟ファミリーのボスが貴女が継ぐものだと思って、娘を婚約者にって日本に送ったそうよ」


「えぇ!? そ、そんなの困るよ!!」


「そのまま送り返したら、流石に角が立つから会うだけ会ってほしいそうよ」


「そんなぁ〜」


「そういう訳だから、客間に行ってちょうだい」


「えっ?」


「もう待たせてるのよ……」


「ちょっ、母さん!? 何でそんな、急なの!? 事後承諾なんて酷いよ!」





 次々知らされる事実に頭が追いつかない。
 勝手に送る方も無茶苦茶だけど。
 起こった後に伝えるなんて母さんも母さんだよ!!
 確かに言い辛いとは思うけど、起こった後に言われても対処のしようもないじゃないか!


 気不味そうに視線をそらす母さんを後目に「母さんなんて大嫌い!!」そう叫んで部屋を取び出した。
 背後から、言葉になってない叫び声が聞こえるけど、そんなの知らない。


 半ばやけくそな気持ちで走っていたら、いつの間にか客間の前に来ていた。
 ため息ひとつ。さっさと断って、終わらせてしまおうと扉を開け中へと入る。


 まさか、運命の出会いがあるとも知らずに。





終わり





おまけ





「……君名前は?」


「なのは、高町なのはだよ」


「なのは、私と結婚して!!」


「ふぇ!? え、えっと……」


「駄目、かな?」


「あぅ、そ、そうじゃないけど……」





 部屋に入ったフェイトちゃんが、一目惚れして、なのはちゃんにプロポーズするとか。





「なぁ、アリサちゃん、すずかちゃん、わたしら空気ちゃうやろか?」


「そ、そうだね」


「まぁ、あたしはパパに行けって言われた、だけだから別に良いんだけどね」


「ん〜、まぁアリサちゃんは、すずかちゃんにご執心やから寧ろ良かったんやろうけど♪」


「アリサちゃんそうだったの?」


「なぁっ!? は、はやてぇ!? あああアンタはぁ!?」





 二人の世界に旅立ったフェイトちゃんとなのはちゃんを傍観しながら、アリサちゃんの密かな想いを暴露するはやてちゃんとか。





「アリサちゃん。私アリサちゃんなら良いよ?」


「はっ!? え? えぇ!?」


「私をお嫁さんにしてくれる?」


「いや、その、えっと……」


「にしし♪ 良かったなぁ〜アリサちゃん」


「はやてっ!?」


「ねぇ、アリサちゃん。してくれるの? くれないの? どっち?」


「あぁ、もう分かったわよ! あたしの所に来なさい!」


「うん、アリサちゃん大好き♪」





 実話すずかちゃんもアリサちゃんの事が好きで、想いがバレて動揺してるアリサちゃんから言質を取るとか、結構腹黒……げふんげふん。だったり。





「ん? フェイトちゃんそっくりやなぁ〜」


「私アリシア、フェイトのお姉ちゃんだよ!」


「えっと、フェイトちゃん、なのはちゃんにご執心やねんけど。もしかして止めに来たん?」


「違うよ? 私はフェイトの意志を尊重するもん!」


「ふ〜ん。そっか、妹想いのええお姉さんなんやね」


「……貴女、名前なんていうの?」


「ん? わたしか? わたしは八神はやてや!」


「はやて、ね。決めた! わたしはやてのお嫁さんになる!」


「え? いやいや、ちょお待って!? わたしマフィアやで!?」


「じゃあ婿養子に来て!」


「いや、わたし一人っ子やから無理やて」


「嫌だ! わたしははやてが良い!」


「うっ!? そ、そんな事言われたかて……」





 と、まぁ、一人残ったはやてちゃんがアリシアちゃんに惚れられるとか。
 いつもは飄々(ひょうひょう)としてるのに、迫られてたじたじなはやてちゃんとか。





終わり




まぁ、例のごとく何が書きたかったのか忘れた(ぇ
たぶんテスタロッサファミリーにハマった時期だとは思うんだけどねww


【2012年1月31日 2月2日 8月8日】著




SS保管庫 リリカルなのは

トップ アイコンネズミ堂〜時々ねこ屋〜 トップページ
直線上に配置

inserted by FC2 system