とある日の司令と司令補、マスクその後








 花粉症でダウンしたはやてをシャマルに任せ。執務室で資料の整理をしているヴィヴィオ。
 暫くして診察を終えたシャマルが「ヴィヴィオちゃん、薬を置いてるから後で飲ませてね〜」と言い残し帰って行った。
 程なく資料の整理を終え、軽く背伸びをして身体をほぐしたヴィヴィオは仮眠室を覗いた。





「ん〜、大分楽そうになったみたいだけど。薬を飲み忘れるなんて相変わらず自分の事には無頓着と言うか、これは少しビシッと言わない駄目かなぁ?」





 ベッドに軽く腰掛け、はやての頭を軽く撫でるヴィヴィオは。規則正しい寝息を立てるはやてに安堵し、苦笑いになる。





「いつも無理するんだから。ヴィヴィオは、いつも心配なんだよ? 倒れるまで無理する癖、そろそろ直して欲しいんだけどなぁ〜」





 ため息と共に吐き出されるヴィヴィオの本音。周りに心配かけない様に辛くても隠して、誰にも頼ろうとしないはやてへの不満。
 依然なのはとフェイトに相談した時、口を揃えて「はやて(ちゃん)だから仕方ないよ」と苦笑いで言われた為。半ば諦めているものの、せめて自分だけでも頼って欲しいという欲求は恋人ととして当然の権利だと思う。
 あまり多くを求めないヴィヴィオの数少ない願いだ。





「まぁ、ヴィヴィオとしては、たまには甘えて欲しいと思うんですよ? 恥ずかしがり屋なはやてさんは中々甘えてくれないけど。
 ねぇ、はやてさん。別に寝てても良いんですけど、狸寝入りですよね? 頬が赤くなってますよ」


「……いつからバレてたん?」


「ん〜「ヴィヴィオは、いつも心配なんだよ?」の辺りからかな?」


「最初からやんか。はぁ、ヴィヴィオには適わんなぁ〜」





 狸寝入りだと思い鎌を掛けると、数秒の沈黙ののちバツが悪そうに問うはやて。
 頭を撫でた時、少し感じた違和感はやっぱりあってたようだ。
 諦めたようにこぼすはやての言葉には、少し照れ隠しも含まれていて。指で頬を掻きながら少し視線をずらしている。





「はやてさんと一緒に暮らす……」


「は?」


「うん、そうしよう。はやてさん!!」


「は、はいっ」


「ヴィヴィオと結婚して下さい!」


「は、ぇ?」





 はやての体調を管理するには常に一緒にいるのが一番だと結論に到達したヴィヴィオ。
 その脳内会議の過程でボソボソと呟かれた、突拍子の無い言葉に寝起きのはやては間の抜けた声を漏らす。
 聞き間違いやろか? と首を傾げるはやては、元気一杯に名前を呼ばれ。横になっていた身体を起こして、反射的に返事をした。
 そして色々すっ飛ばしたヴィヴィオの言葉に思考が追いつかず、間の抜けた声しか出せない。





「血痕? 怪我でもしたん?」


「けっこん違いです! というか態と間違えてませんか?」


「いや、いや、いや。待って! え? けっこんってあの結婚?」


「はい、どう考えてもあの結婚です」





 焦るはやてに、にっこりと笑顔で答えるヴィヴィオ。瞬時に染まる紅は両耳は疎か首まで綺麗に染めている。





「いや、い、いきなりそんな事言われても……」


「予想以上の反応で、こっちまで照れてしまいます。で、駄目ですか?」


「ぅあ!? だっ、駄目とかやないんやけど。急に言われても心の準備が……」





 口をぱくぱくさせたのち、視線を泳がせるはやて。そんな様子を見たヴィヴィオは少し頬を染め、上目遣いで問いかける。
 破壊力抜群の視線に理性が削られるはやて。シャマルの治療のお陰で症状が治まってるとはいえ、症状が出た反動で体力も気力も著しく低下している状態に。理性まで削られたらたのだから堪ったもんじゃない。
 周りからへたれと言われるはやてだが、プロポーズ云々に関しては自分からと決めていた手前素直にYESとは言えない。


 もごもごと、自分からと思ってたのにとか、そこまでへたれやないとか、白い魔王がとか呟いている。
 最後に不穏な単語が聞こえたが、触れない方が良いだろうと自己完結したヴィヴィオ。
 触らぬ魔王……げふんげふん。神に祟りなしである。





「えっと、はやてさん。ヴィヴィオとじゃ嫌?」


「え? ちゃっ、ちゃうよ!? ただ、その、そういうんはわたしから言いたかったなぁ〜とか思ってたり」


「ふぇ? はやてさんがしてくれるつもりだったの?」


「まぁ、その、わたしのが年上やし。そのつもりやったんやけど、ごめん。意気地無しで」





 首を傾げて問うヴィヴィオに否定するはやて。尻すぼみになる言葉をちゃんと拾ったヴィヴィオは、まさかはやてがしようと思ってるとは予想しておらず。素で問い返してしまった結果、ベッドの上で体育座りで暗雲を背負い本気で落ち込むはやてが出来上がってしまう。





「えっと、あの、はやてさん?」


「どうせわたしなんて、へたれやもん。プロポーズもまともに出来へん意気地無しで甲斐性なしや」


「いや、あの、はやてさん?」


「どうせわたしなんて……」





 いじいじといじけるはやてに、うわぁ、変なスイッチ押しちゃったなぁ〜と苦笑いになるヴィヴィオ。
 ただ単に、はやての体調管理に良いと思って軽い気持ちでプロポーズしたなんて言ったら再起不能になるであろう事は目に見えて分かる為。下手なフォローは出来ない。
 いじけるはやてを宥め、無事帰宅したのはそれから数時間後の事だったそうだ。





終われ。





おまけ





 その夜、失意のはやては、ツンデレでへたれと言われる親友に通信していた。





「ん、はやてじゃない珍しいわね。何かあったの?」


「……アリサちゃん。同じへたれとして相談に乗って欲しいんやけど」


「誰がへたれよ!! 誰が!! ってはやて? アンタ落ち込んでない?」


「アリサちゃん、わたしは自分が情けない。プロポーズすらまともに出来へん。もうどうしたらええか分かれへん」


「ちょっ、ちょっと待ちなさい!? ぷ、プロポーズ!? 一体なんの事よ!! 順を追って話してくれないと分かんないわよ!!」





 はやてのへたれ宣言に吠えるアリサだが、いつもと様子の違うはやてに眉根を寄せる。
 口を開けばネガティブ発言しか出てこないはやて。その中のプロポーズという単語が引っかかったアリサは、はやてを宥め。
 根気よく相談に乗り、一晩かけていつものはやてに戻したそうだ。





終われ。




いちゃいちゃニヤニヤ的な話の筈が何故こんな事にorz
そしてアリサさん、お疲れさまですww
はやてちゃんばっかり構ってないで私も構って欲しいなぁ〜♪ ってすずかさんに誘われるんですね? わかります(笑)SASOIUKEダナww


【2012年5月31日】著



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