追い掛けて追い越して 4








 あからさまに誤魔化されたんやけど、まぁええわ。アリサちゃんやしなぁ。
 それよりお酒を飲まなあかん事の方が問題や、取り敢えずシャマルに言われた通り食べ物を食べる前にあんまり飲まん様に気を付けんとやな。





「それじゃあ、月村さんと高町さんの歓迎って事で乾杯!」


「「「乾杯」」」





 乾杯の声と共にグラスが、ぶつかり良い音が響く。
 グラスを勢い良く傾け、お酒を飲むアリサちゃん。何と言うか、いつにも増して飲みっぷり良くない? ってか飲み干す勢いとか、どんだけなんよ!


 アリサのピッチの早さに呆然と固まるはやて。
 すずかとヴィヴィオが、二、三口程口を付けた所で、固まっているはやてに気付いたアリサが怪訝そうな顔ではやてに話し掛ける。





「って、アンタなに固まってんのよ?」


「いや、アリサちゃんピッチ早過ぎやろ!?」


「そう、別に普通だと思うけど?」


「いや、どう考えても早いって!! そう思うやろ、二人とも」


「えっと、す、少し早い様な気がします」


「そうですね、私も早いと思います。一気飲みは身体にも良くないから止めた方が良いと思いますし」


「うっ! そ、そうね、気を付けるわ」





 味方を増やすべく二人に話を振ると、予想通り加勢してくれる。
 遠慮がちに言う高町さんに対して、きっぱり早いと言いながらもアリサちゃんの身体を気遣うという高等話術も駆使する月村さん。
 これにはアリサちゃんも予想外だった様で、言葉に詰まりながら気を付けると答えた。


 月村さん、完全にアリサちゃんの扱いに手慣れてへんか? 手の平の上で踊らされてるって感じに見える。





「って、なによはやて。あたしを見てにやにや笑うのは止めなさい!! それと、いつまでも固まってないで早く飲む」


「へ〜い」





 にやにや笑うわたしに八つ当たりするアリサちゃん。すずかちゃんに窘められて恥ずかしいんやろうけど紅く染まった顔で言われても全然怖ないから。


 軽く返事をして適当に注文したお酒を口に含むと、アルコール独特の苦みに思わず顔をしかめるはやて。





「……に、苦っ。良くこんなん美味しそうに飲めるわ」


「アンタが、子供舌なだけよ! ちょっとは慣れなさい」





 到底美味しいと思う事の出来ない味に思わず、本音が漏れる。
 漏らした呟きが小さかったにも関わらず、わたしの呟きを拾い諭す様に言うアリサちゃん。


 いやいや、無理や! こんなんシャマルの失敗した料理と同等やん。
 思考が変な方向に向かいながら、首を左右にぶんぶん振るはやて。
 口直しに、焼き鳥を食べて一息つく。





「はぁ、美味しい。あ、お姉さんオレンジジュース一つお願い」


「ちょっとはやて、アンタそれ飲み終わってないのにジュース頼むってどういう事よ?」


「いや、これ不味いしアリサちゃん飲んでええよ?」


「はぁ? 自分で頼んだんだから飲みなさいよ!」

「嫌や、わたし元々お酒なんて飲む気ぃなかったし。そもそも親睦の為に来とるんよ? 酔い潰れたら意味ないやん! なぁ月村さん、高町さん」


「あはは、えっと……」


「ん〜、そうですね。はやて先生の言う事も最もだし、無理強いは可哀想だよアリサちゃん?」

「す、すずかぁ!?」





 月村さんに敬語なしで、ちゃん付けされて動揺するアリサちゃん。
 てか、さっきまで月村さんって言うてたのに名前で呼び捨てになっとるよアリサちゃん。





「なぁに、アリサちゃん?」


「いや、あの、だから……」


「ん?」


「な、なんでも、ないわ……」


「そう?」





 叫ぶアリサちゃんに、にこにこ微笑む月村さん。
 有無を言わせぬ笑顔に負けてガックリうなだれるアリサちゃん。


 なんや想像してたのと違う。以外に尻に敷かれるタイプやったんやなぁ〜アリサちゃん。





「え〜と月村さん、アリサちゃんと随分親しいみたいに見えるんやけど、どういう関係なん?」


「言っても良いのかな?」





 わたしの問いかけには答えず、アリサちゃんに向けて言葉を掛ける月村さん。
 その言葉に顔面蒼白のアリサちゃん、てか一体何を隠してるんよ?





「アリサちゃんのその反応、凄く気になるんやけど」


「ん〜、これくらいなら良いよね?」


「月村さん?」


「はやて先生、私とアリサちゃんは幼馴染みなんです」


「幼馴染み。って、い、いつから?」


「私達の両親が親友で、生まれた時からだと思います」


「そうなんや。まぁ、他にも何かありそうやけど追々聞くとして、今日は二人の事を知りたいなぁ〜」


「ふぇ?」


「あぁ、勿論高町さんの事も聞くから!」


「あ、はい。はやて先生」


「というか、二人とも学校外で先生て呼ぶん禁止や! あと敬語もいらんよ、わたしの事ははやてでええから。わたしも名前で呼ばして貰うし♪」





 すっかり傍観者と化した高町さんにも白羽の矢を立てると間の抜けた声を出す。惚けてられるんも今の内やで?
 親睦を深める為の歓迎会なんやし、そろそろ堅苦しいのは解禁でええやろ?


 意気揚々とアリサとずすかの関係を暴露しようと考えるはやて。
 まさか自分がしっぺ返しにあうとは、この時夢にも思っていなかった。





 続く




あとがき


アリサとはやてさんの絡みが書いてて凄く楽しい♪
前から思ってたけど、この二人のやりとり書いてて楽しいホントに!


逆にすずかって動かし難いんだよね〜
アリすずは好きなんだけどねww


【2012年1月12日】





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